刺繍の意味と歴史
刺繍(Embroidery)とは
針と糸(時には細い針金)で、織物(ときには皮革その他の材料)を飾ること。
刺繍の歴史
エジプトの絵画、彫刻、墳墓壁画から、古代においてすでに衣服やベッドカバー、掛布、天幕に刺繍が行われたことが推察される。また、装飾のある衣服を着た異邦人が描かれていることから、刺繍の技術は他の諸国でも高度の発達していたと思われる。
船の帆は、簡単なパッチワークで作られ、それには小さな模様が刺繍してあったといわれる。
旧約聖書の『出エジプト記』や『エゼキエル書』には、ヘブライ人が、祭服として今様の金板や金の針金を上質の亜麻布に鮮やかな色で刺し、また、日常着や帆にも装飾があったことが記されている。
中国では、刺繍は前十一世紀にすでに行われていたと思われ、伝統的な装飾のいくつかが前6世紀頃の『書経』の中に記されている。
モンゴルのアルタイ地方からは、スキタイ人の作った紡毛のチェニックやジャケット、ジャーキンが発掘された。チェニックは正確なステッチが施され、凝った装飾と生気に満ちたデザインのアップリケでおおわれていた。
また、革やフェルトのジャーキンも豊かに飾られ、女子服、ベルト、バッグ、袋物、鞍敷などにもアップリケが施られていた。
エジプトのコプト時代(1世紀)には、チェニックの胸、袖口、肩、裾まわりにキリスト教を象徴した刺繍(コプト織)がみられ、図柄は通常赤紫色で仕上げられて、自然色の亜麻糸のステムステッチで輪郭を引き立たせていた。
4,5世紀になると、意匠は一層美しく入念になり、おもにピンク系の赤、黄、緑など別の色もわずかに取りいられるようになった。
〜ブリタニカ国際大百科事典より〜